はじめにMessage

不妊症は基本的に他の病気と違い本人の日々の生活にはほとんど影響しません。そのため他の人には特にその苦労が分かりにくく理解されない事が多いと思います。現在は5組に1組は不妊症であると言われており、多くの方が悩まれています。

当院では不妊カウンセラーや培養士も在籍しており、体外受精から顕微授精まで幅広く不妊治療に力を入れております。

不妊症のご相談、質問は当院にお気軽にご相談ください。
不安を取り除き、明るく進んでいけるサポートを。
それが、私たちおおくま産婦人科の願いです。

不妊外来病棟(新設)

不妊症とは?Infertility

不妊症とは、妊娠や出産の可能な年齢のカップルが普通に夫婦生活を営んでいるに関わらず、1年間妊娠しない状態を不妊症と定義しています。 なかなか妊娠しないのはどうして?と不妊に悩んでいる人はあなただけではありません。 不妊症はまれな疾患でなく、日本では5組に1組は不妊症と言われています。また、子供を一人生んだ後、二人目が欲しくてもなかなか子供ができない場合があります。

不妊症は、決してめずらしいことではなく、治療できないものでもありません。 不妊症の原因は男女ともに様々です。一人で悩まず、まず相談してみましょう。当クリニックでは、産婦人科医師、助産師、看護師、胚培養士の医療スタッフが産科・婦人科・不妊治療に取り組んでいます。 お気軽にご相談ください。

不妊治療についてInfertility Treatment

不妊治療は、検査をしながら段階的に行います。理想は自然妊娠ですが、原因がわからない場合や、 一般的な治療では妊娠が望めない場合は、不妊治療という選択しなければならないこともあります。 不妊治療は、長い道のりになることもありますが、まず大切なことは、夫婦ともに治療について正しく理解し、 納得して進めていくことです。 不妊治療の基本的な進め方は治療内容で詳しくご説明いたしますが、問診から検査をふまえた上で治療を行い、 その結果を見ながら進めていきます。

不妊治療における流れと目安

検査・診療内容 ステップアップの目安
STEP 1 不妊検査 初診時から随時行います。
(約1~3周期)
STEP 2 タイミング法 1~5周期を目安に行います
STEP 3 人工授精 1~5周期を目安に行います
STEP 4 体外受精(IVF)/顕微授精(ICSI)  

一人ひとりの状況に応じて治療していきます。

不妊症検査

※現状やご要望、以前に治療を受けたことがあれば、その内容や今までの経過をお伺いした上で今後の必要な治療法などについてご説明します。

不妊症の検査は、原因別に次のような項目について調べます。

原因 検査内容 検査方法
排卵障害 ちゃんと排卵しているか? 基礎体温、ホルモン検査、超音波検査
卵管因子 卵管が詰まっていないか? 子宮卵管造影検査
子宮因子 受精卵が着床できるか? 超音波検査、子宮卵管造影検査
男性因子 卵に受精できるか? 精液検査、性交後試験(フーナーテスト)

不妊症検査の説明

基礎体温 覚醒直後に測定します。 目が覚めた直後に、動かずに布団の中で測定します。 トイレに行った後など起床後に測定すると正確性に欠けます。 覚醒直後に布団の中で測定するためには就寝時に枕元に基礎体温計、基礎体温表、筆記用具を準備してください。
ホルモン検査 以下の項目について血液検査を行います。 LH、FSH:卵巣が排卵するための予備機能を調べます。 PRL(プロラクチン):乳腺の発育と乳汁分泌を刺激するホルモンですが、高値の場合視床下部の刺激ホルモンを抑制して、排卵障害や黄体機能不全を招きます。 エストロゲン:卵胞で産生され、卵巣機能の評価をします。 プロゲステロン:着床が成立するのに必要なプロゲステロンが卵巣から充分に出ているかどうかを調べます。
超音波検査 子宮や卵巣の状態を超音波で観察します。子宮筋腫や卵巣嚢腫の診断や、卵子が入っている袋(卵胞)の発育状態のチェックに用いられます。
頚管粘液検査 精子が子宮内に進入するのに必要な頚管粘液が排卵の頃に充分に分泌されているかを調べます。
性交後検査
(フーナーテスト)
通常の性交で精子が充分に子宮の中に入っているかどうか、精子と子宮の適合性を調べます。 性交後6時間~9時間の間に頚管粘液中の精子の数や運動を顕微鏡で調べます。
子宮卵管造影検査 子宮腔内に造影剤を注入し、造影剤が子宮から卵管を通り腹腔内に流れ出す様子をX線で観察します。 子宮内腔の形、卵管の通り具合、卵管の太さ、卵管の癒着の有無などを調べます。
精液検査 精液の量、精子の数、運動率を調べ男性側の不妊原因の有無を調べます。 専用の容器に採取し、常温で2時間以内にお持ちください。 基本的に、20度以下あるいは40度以上になると精子の運動率は著しく低下します。
抗ミュラー管ホルモン
(AMH)
AMHは女性の卵巣予備能を判断する検査です。治療をする際の指標となります。検査は採血にて行います。
抗精子抗体 抗精子抗体の値が高いと、子宮や卵管での精子の動きを止めてしまったり、受精能力を阻害します。そのため、抗精子抗体があると体外受精以外での妊娠がしにくいと考えられています。検査は採血にて行います。

一般不妊治療Fertility treatment

不妊治療は、検査結果を踏まえたうえで最適な治療方法をご提案し、進めていきます。 主には、自然受精を目的とした一般不妊治療と妊娠効果を高める高度生殖医療の2つの方法があります。

タイミング法

不妊治療といえば、人工授精や体外受精など高額な治療を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、「夫婦生活で自然に赤ちゃんができる」ことが理想的です。 不妊治療の方法には、大きくわけて3つのステップがあり、より自然な妊娠を促すのがこのタイミング法(タイミング指導)です。 簡単にいえば、正確に予測された排卵日にあわせて、夫婦生活(性交)を行い、自然妊娠を期待するという方法です。 しかし、ただ単にタイミングを合わせるという指導だけではありません。その一連の課程で不妊となる原因を調べ、適切な治療方法を見出すことにもつながります。 不妊原因となる明らかな症状がある場合には、問題点を補ったり、取り除いたりするための投薬治療などもあわせて行うこともあります。

投薬治療

不妊検査で、薬剤でカバーできる原因が見つかった場合には飲み薬などの投薬治療を行いながら、治療をステップを進めていきます。

<投薬治療例>

●飲み薬/クロミフェン製剤(製品名クロミフェン、クロミッドなど)
軽い視床下部性の排卵障害や多嚢胞性卵巣(PCO)などに有効な脳に働きかけるタイプの排卵誘発剤です。現在もっとも広く使われています。 ただし副作用として、頸管粘液が少なくなる欠点もあります。
●飲み薬/シクロフェニル製剤(製品名セキソビット)
もっとも軽い排卵誘発剤です。クロミフェン製剤にくらべれば、排卵誘発効果はそれほど強くありませんが、目立った副作用もありません。
●注射/hMG(FSH)+hCG療法
クロミフェン製剤で効果がなければ、hMG+hCG療法(ゴナドトロピン療法)を試します。 hMG製剤やFSH製剤は、卵巣に直接働きかけるタイプの排卵誘発剤です。 効果は非常に強力で、ほとんどのケースで排卵を起こすことができます。 その反面、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などを発症する可能性もありますので、十分な注意と対策が必要です。 hCG製剤は、排卵に向けて最終的な成熟をうながす薬です。 卵胞のサイズを超音波でチェックして、排卵直前に注射します。単独で用いることもあります。

人工授精(AIH)

人工授精は、排卵のタイミングにあわせて精液を洗浄し、直接子宮内に注入する治療法です。

人工授精は、専用のカテーテルを使用し、排卵のタイミングに合わせて調整した精子を直接子宮内に注入して、自然な受精と着床を促します。運動が良好な精子を選別するために、精子分離剤を使用した攪拌密度勾配法と呼ばれる方法を用い精子の調整を行います。 人工授精で妊娠される方の90%は4~6回までに成功されます。その回数を目安に体外受精へステップアップすることをおすすめします。

<精子の調整>
1.精子分離剤に培養液と混和した精液を重層し遠沈
2.死んだ精子・弱い精子は、精子分離剤を通過できない
3.精子分離剤を完全に取り除く
4.培養液で2回洗浄後、運動良好精子を回収

高度生殖医療ART

体外受精(IVF)

体外受精とは、体外に取り出した精子と卵子を体外で受精させることです。そして体外で培養し発育した胚を子宮に戻すことを胚移植といいます。

体外受精は以下の6つのステップで行います。

STEP 1 排卵誘発(生理開始3~10日頃まで)

排卵誘発とは・・・ 1回の治療あたりの妊娠率を高める為には、卵子を複数個育てる必要があります。その為に排卵誘発剤を使用します。排卵誘発には、卵子を育てる為のHMG製剤の注射、卵子の成熟を開始させるHCGの注射、自然排卵を抑えるGnRHアナログ(点鼻スプレー)を使用します。点鼻スプレーの使用期間の違いでロング法とショート法の2通りに分類されます。
ロング法
治療を開始する前の周期の黄体期(高温相)から点鼻スプレーを開始します。その後月経が始まったら、月経3日目からHMG製剤の注射を7日~10日間行います。注射の本数は卵胞の大きさをエコーで確認しながら決定していきます。スプレーは採卵2日前まで続けます。
ショート法
月経開始日から点鼻スプレーを開始します。月経3日目からHMG製剤の注射を7日~10日間行います。注射の本数は卵胞の大きさをエコーで確認しながら決定していきます。スプレーは採卵2日前まで続けます。

STEP 2 採卵(生理開始11~14日頃)

採卵は、超音波で卵巣の位置を確認しながら、細い針で卵巣を穿刺し、卵胞中の卵子を回収します。採卵時間は30分程度です。

STEP 3 受精(採卵日)

体外受精・顕微授精(顕微鏡を用いて、卵子の細胞質内に精子を注入し受精させます。)

STEP 4 培養(採卵から2日~6日後)

受精卵
培養2日目
(4細胞)
培養3日目
(8細胞)
培養4日目
(桑実胚)
培養5日目
(胚盤胞)

受精卵は、体内と同じ環境の培養器に入れ、2日~6日間培養します。

STEP 5 胚移植(採卵から2日~5日後)

胚移植には、採卵後2~3日目に戻す初期胚移植と5日目に戻す胚盤胞移植があります。 移植時は、1~2個の胚をエコーを用いて柔らかいカテーテルを使用して行います。胚移植後は、約30分の安静後帰宅して頂きます。 また、透明帯(卵の周りの殻の部分)が硬い、または厚いため、ふ化が難しいと思われる場合や、良好胚を何回移植しても着床しない場合には、アシストハッチング(AHA)を行い、透明帯周辺にスリットを入れてあげることによってふ化しやすくする手技を行います。

STEP 6 妊娠判定(採卵から約14日後)

胚移植から約13日目に採血を行い、血中hCGというホルモン値によって判定します。

顕微授精(ICSI)

顕微授精は、男性の精子が少なかったり、運動性が弱い場合に行います。顕微授精も体外受精と同様に6つのステップで行います。体外受精との違いは、STEP3の工程です。

凍結保存

胚移植後に残った胚は胚凍結が出来ます。胚凍結を行うことにより、次回採卵せずに凍結しておいた胚を融解して胚移植することが出来ます。

費用についてMedical bills

保健適用料金表(3割負担の料金)2022年4月より

一般不妊治療

一般不妊管理料
750円(3ヵ月に1回)

人工授精
5,460円

高度生殖医療

(1) 生殖補助医療管理料
750円(1ヵ月に1回)

(2) 採卵基本料
9,600円

採卵数に応じた加算料金
採卵数:0 9,600円 9,600円
採卵数:1個 7,200円 + 9,600円 16,800円
採卵数:2~5個 10,800円 + 9,600円 20,400円
採卵数:6~9個 16,500円 + 9,600円 26,100円
採卵数:10個以上 21,600円 + 9,600円 31,200円

(3) 受精方法

① 体外受精 卵数に関わらず 12,600円

② 顕微授精 実施卵数:1個 14,400円
実施卵数:2~5個 20,400円
実施卵数:6~9個 30,000円
実施卵数:10個以上 38,400円

〇 体外受精と顕微授精の両方実施した場合:体外受精料金の半額(6,300円)+顕微授精実施数
〇 TESE(精巣内精子採取術)精子を用いた場合:精子調整料として、15,000円 加算

(4)受精卵・培養 管理料

実施数:1個 13,500円
実施数:2~5個 18,000円
実施数:6~9個 25,200円
実施数:10個以上 31,500円

(5)胚盤胞 加算

実施数:1個 4,500円
実施数:2~5個 6,000円
実施数:6~9個 7,500円
実施数:10個以上 9,000円

(6)胚移植

新鮮胚 移植 22,500円
融解胚 移植 36,000円

〇 アシステッドハッチング(AHA)実施した場合:3,000 円 加算
〇 ヒアルロン酸含有培養液を使用した場合:3,000 円 加算

(7)胚凍結保存 管理料

保存胚数:1個 15,000円
保存胚数:2~5個 21,000円
保存胚数:保存胚数:6~9個 30,600円
保存胚数:10個以上 39,000円

〇 胚凍結保存維持管理料:10,500 円 / 年間
 *凍結保存の開始日から起算して3年を限度とする(2回まで)
 *妊娠などで、治療を中断されている場合は自費精算となります

よくあるご質問Q&A

不妊治療について

Q1なぜ高齢になると妊娠しにくくなるのですか?

A加齢とともに卵子の数や質が低下しますので、女性の年齢と妊娠は密接な関係があります。だいたい35歳を過ぎると妊娠の確率が低下し、40歳を過ぎるとその低下ペースは急激になります。

Q2中絶すると不妊症になりやすいのですか?

A一般的にはなりません。ただし、中絶の時に感染症を起こすなどで子宮内膜に癒着が起きたり、中絶の処理により子宮内膜が薄くなると、不妊症になる場合があります。

Q3結婚後1年半になりますが、妊娠しません。どうすればいいでしょう?

A不妊治療は大きく分けて、一般不妊治療と生殖補助医療(体外受精・胚移植など)があります。それぞれのステップでからだや心への負担や治療費が違いますので、まずは夫婦でよく話し合い、不妊治療を受けるかどうかよく考えてある程度の結論を出してからこちらに来院されることをおすすめします。

Q4ひとり目はすぐ妊娠したのに、ふたり目はできません。どうしてでしょうか?

A続発性不妊症かもしれません。また、1度目の妊娠よりは年齢がすすんでいるので、排卵障害があるかもしれません。ひとりで悩まず、まずは一般不妊検査を受けて原因を確かめましょう。

Q5不妊について相談したいのですが、どこへ行ったらいいですか?

Aお住いの近くの保健所で、不妊や不妊治療についての相談を受け付けています。また、最近はインターネットや電話などを通じてボランティア相談をしている機関もありますので調べてみるといいでしょう。当院では、不妊カウンセラーや体外受精コーディネーターが在籍しています。お気軽にご相談ください。

Q6不妊検査に行こうと思っていますが、タイミングはいつがいいですか?

A治療に行ってみようと思った時がタイミングと考えて、連絡してみてください。あなたの周期に合わせた検査から始めてもらえるはずです。

Q7不妊治療はお金がかかると聞きましたが・・・

A2022年4月から、不妊治療のうち人工授精・体外受精・顕微受精・胚培養・胚凍結・胚移植が保険適用となりました。

Q8不妊治療の妊娠成功率はどのぐらいですか?

A不妊治療をしても必ず妊娠するわけではありません。女性の年齢の影響や治療法でも確率が違いますが、一般不妊治療では、2~3年のうちに4~5割が妊娠に成功するといわれています。

Q9AMHという言葉をよく耳にしたり目にしたりしますが、どういったものなのでしょうか?

AAMHを調べる事で卵巣に残された卵子の数の目安(卵巣予備能)を推測する事ができます。

初めてご来院される方へ

初めての来院時に受付にて問診票をご記入頂いております。ボタンより問診票をダウンロードし、予め記入したものをお持ち頂くと受付がスムーズです。

  

おおくま産婦人科は、佐賀県出身のスノーボーダー加藤 彩也香 さんを応援しています。

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